寧々「少し時間がかかるかもしれませんが……私は絶対に、幸せにしてみせますから。それで、また2人で心の底から笑いあいましょうね」
寧々は笑ってくれた。
涙を零しながらだけど、それでもちゃんと笑ってくれた。
(サノバウィッチ/寧々ルート)
──涙は宝石。恋せよ、乙女。
サノバウィッチ、寧々ルート読了です。
メインヒロイン4人の中でもさらに中心的なキャラクターですので、個別ルートにも気合が入っていました。
保科柊史と綾地寧々。
能力や代償の事を考えて誰かと深い付き合いをしたいとも思っていなかった、そんな2人は出会ってから徐々に変わっていきます。オカルト研に人が増えて、友人が増えて、毎日が楽しくて。そして、笑顔が自然になっていく。
2人一緒にいると楽しい事ばかりだと語る、似たもの同士。そして徐々に惹かれあっていき──けれど。
寧々「もう……本当に時間がないみたいです……」
柊史「…………そっか」
さらに強く寧々を抱きしめる。
もうすぐ、寧々は長い旅に出てしまうから。
そしてなにより、オレにとっては最後だから……寧々の温もりを、この肌で感じられるのは、これで最後になる。
結ばれた2人の前に立ちはだかる壁が現れます。願った魔法の影響で、過去に戻ってしまう寧々。一時は立ちどまってしまいましたが、それでも彼らは最後まで、お互いの事を想って行動していました。
寧々を失う未来へ繋がっている道。けれど、だからこそ──寧々との大切な時間を後悔で終わらせたくない。諦めない。笑っていて欲しい。
立ち止まらず、足踏みせず、ちゃんと前を向いて歩いていこうという意思を持った柊史は本当に恰好よくて。だから寧々も「いってきます」と、ちゃんと笑って、進むことができたのでしょう。
そんな柊史の意思は、寧々が過去に旅立った後、整合性をとるために変化した世界の中でも、変わらずにしっかりと残っていました。
ですので、きっとそこからは、また少し違った保科柊史と綾地寧々の出会い──今度も衝撃的なのでしょうか──があったりするのでしょう。
そして、過去に戻った寧々の方は──
七緒の計画が功を奏し、柊史と再度結ばれる寧々。甘々な生活を送る2人ですが、彼女は時折浮かない顔を見せます。
やり直しの人生を歩んでいる自分と、一度きりの人生を歩んでいる周りの人。同じ道を進んでいるようで違うという事に、後ろめたさを感じている。だからでしょう、オカルト研の活動について、必要以上に失敗を恐れていた。自分にとっては2回目の相談なのだから、前よりも良い結果を掴みとらなければならない。──そうやって張りつめて、壊れてしまいそうなくらいに。
ハロウィンパーティーの後、柊史の計らいで集まった皆にお礼を言われた寧々は、周りを見回して問います。
「みなさんは……本当に、楽しいですか?」
「みなさんは……本当に、笑えていますか?」
「みなさんは……本当に、幸せですか?」
本当は不安で仕方なかったのでしょう。自分勝手な願いで巻き戻った世界の中で、元の時間軸で幸せだった人が不幸になってしまったら。自分は柊史と結ばれて幸せな分、よけいにそう考えてしまう。
けれどそんな寧々の問いに、皆は笑顔で答えます。そして手渡される花束。
「出会ってくれて、ありがとう」
感情なんか読めなくても簡単に伝わった本心からの感謝に、皆に負けない笑顔で答える寧々。
長かった寧々ルートの締めくくりに相応しいシーンだと思いました。
そしてエピローグ。
先を知らないことには不安もあるけど、それが普通。みんなその中で、それぞれの幸せを掴んでいくんだ、と語る柊史。
手と手を繋ぎ、満面の笑みを浮かべて歩き出す2人。
彼らが進むその道の先は、まだ見ぬ輝かしい未来に続いているでしょう。