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はじめのはじめ

二次元傾倒な日々。

花咲ワークスプリング! 雑感(ヒカリルートネタバレあり)

部則その1、部員は未練がある者でなければならない

部則その2、部員は他の幽霊を労り、言葉を大切にしなければならない

部則その3、部員は怠惰でなければならない

部則その4、部員は未練を失ったら去らねばならない

部則その5、部員は桜の木の下で立ちどまってはならない

                 (花咲ワークスプリング!/幽霊部部則より)

 

──世の中には、秘密が隠されている。

 

 SAGA PLANETSの新作18禁ゲーム、『花咲ワークスプリング!』をプレイしています。

 何かに未練がある者が集まって、どこに向かうでもなくただ日々を過ごす部活──幽霊部。春もうららな4月15日。花咲遊真は、この謎めいた、けれどどこか魅力的な部活に入部します。怠惰に過ごす事をモットーとしている彼と、一癖も二癖もある個性的な部員たち。時の流れに逆らうように停滞し続ける事を目的とした空間で、彼らは関わり、そして──。

 

 共通部分の文章は、お世辞にも褒められるものでは無い、と思います。話の転換を起こす手段が荒く、人の行動について“気まぐれ”の一言で片づけられないブレがある。けれど、それ以上に魅力的な設定があり、物語を進めるエネルギーとして機能しています。言わずもがな、幽霊部の事ですね。

 

 文頭で引用した部則。これは、幽霊部の設立者──玖音彩乃がつくった物です。

 部員は未練がある者でなければならず、また未練を失ったら去らねばならない。

 時間は否応なしに過ぎていくけれど、流されずに捨てれないものがあって。そんなどうしようも無さに逆らうためか、異常とも言えるほど怠惰に過ごしている遊真。他の部員も皆なにかを抱えていて、それを捨てることが出来ないからどこにも進めない。

 未練があるから、幽霊だから、どこにも進まない。

 物語の中で彩乃は問います。

 

彩乃「桜の木の下には、秘密があります。さて、それは一体どんな秘密でしょ~?」

(中略)

遊真「……孤独」

彩乃「ピンポ~ン、大正解っ♪」

 ある人物と関わりがあったから、答えを知っていた2人。

 立ちどまっている人間は、流れていく世界の中で独りぼっちです。そして、それは仕方ない事だと思っている。けれど、彩乃は言っているのです──孤独で勿れ、と。

 傷を舐め合うために群れているだけ、と言ってしまえば確かにそうなのでしょう。嫌悪感を覚える人もいると思います。どこにも向かわない人間が集まって、ワイワイと騒いで、行き着く場所を見つけた人から去っていく。そんな後ろ向きで前向きな空間が、しかし俺には魅力的に感じました。

 彼らは、行き着く先を見つける事が出来るのでしょうか。

 

 共通部分についてはそのような印象で。

 個別シナリオについては、琴吹ヒカリの話から進みました。

 

 過去──とても楽しかった頃(恐らく何らかの理由で突然終わってしまったのだと思われる)を見つめ、あの頃に戻れたらと願い、立ちどまっていた遊真。

 過去──耳が遠い事が原因で辛い日々を過ごし、あの頃のように独りぼっちになってしまったらと恐れ、立ちどまっていたヒカリ。

 ヒカリルートでは、それぞれの理由から立ちどまっていた2人が出会い、一緒に過ごすことで変わっていき、共に未来へと歩いていく……そんな普通で、だからこそ王道な恋愛が描かれています。

 物語の根幹である幽霊部の秘密、遊真の過去の伏線など、そういったことを解消しなくても、ハッピーエンドへ繋がる未来はあるということで。そういった可能性を見ることが出来るのが、マルチエンディングの美点の一つだなぁとあらためて思いました。

 

遊真「過去じゃなくて、これからをずっと見てる。来週は出掛けられるかなとか、夏休みになったらどこに行こうかとか、その後のことも」

ヒカリ「私も、同じです……。先輩のことばかり考えてます。お話の中では、付き合い始めたら終わってしまうものが多かったけど、そうじゃなかったです。今が、これからが、すごく、愛しい」

 心の方向が過去から未来へと徐々に変わっていく、その速度が、前へと進む歩幅が、ふわりと心地いい物語でした。