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はじめのはじめ

二次元傾倒な日々。

『恋×シンアイ彼女』の話。(ネタバレあり)

 タイトルの通り、もっと具体的に言うと、國見洸太郎と、姫野星奏の話です。

 心の中に、散り散りとなっている感情の断片を拾いながら書いていこうと思います。それらが繋がって、感想、という創作になるかどうか。けれど、読んだ以上は、受け取った以上は、何かを書かざるを得なくなるような──そんな物語でした。

 

 胸の中に秘めた何かを伝えるために文章を書きだした少年と、彼の手紙を受け取り返事をせずに姿を消した彼女。運命的に再会した二人は──。そんなイントロダクションから描かれる本作は、予想もつかない方向へと進んでいきました。物語は、一途に星奏を想い続ける洸太郎の視点から語られています。ところが星奏ルートの最後、彼女がプロの作曲家として活動していたことが明らかとなり、洸太郎は理解してしまいます。姫野星奏の全ては、音楽にささげられていることを。この街に戻ってきたのは、スランプのためであって、また彼女は自分の元を去ってしまうのだということを。

 彼女の心に響くような作品を書く。そのために洸太郎は再び筆をとって。物語は終章へと続いていきます。

 星奏のために捧げられた日々。全力で彼女を追い続けた日々。

 星奏ルートでも、終章でも、書き綴られているのは、洸太郎の戦いの記録でした。

 終章の最後、洸太郎は、星奏へと全力で駆け抜けた日々を、思い返すととても美しく輝いている、なにものにもかえがたい宝物だと言っています。ついぞ、どこにも辿りつけなかったにもかかわらず。

 そして、それは星奏も同じであったろう、と。

 そこまで読んで、俺は、ああ──この物語は、星奏を全力で追い続けた洸太郎と、音楽を全力で追い続けた星奏の、戦いを描いていたんだ──そう思いました。

 全力で追い続けた者同士の、戦いの日々。どこにも辿りつけなかった戦士達の、戦いの記録。その光景は、眩しく美しい。グロリアスデイズ。

 

 音楽を選んだ星奏は、無遠慮な言葉を付け加えれば、洸太郎より音楽を選んだ。けれど、だからといって洸太郎の事が好きではなかったのか。決してそんなことはないでしょう。どちらもかけがえのないほど大切で、けれど、どっちつかずではいられない。そういう世界に身を投じていた。だから、音楽を選んだ。

 正論を言うのであれば、「ならば洸太郎に、きちんとそのことを伝えるべきだろう」ということになります。ただ……言えなかったんでしょう。彼女は、普段はやっぱりただの少女(SCHOOL GIRL)で、自分の気持ちを上手く言葉にする術がなくて、洸太郎に面と向かって嫌われることが怖かったんでしょう。

 

 そんな彼女だからこそ、終章では、手紙の形で、二度と洸太郎に会わないと誓う、という言葉を残したことが突き刺さります。彼女は、いったいどんな気持ちで、どんな顔をして、その言葉を書いたのでしょうか。ただ、きっと涙は流さなかったと、そう思います。そういったことは、罪悪感を抱えた彼女の、最後のプライドが許さなかったのでは、と。……蛇足ですね。

 ただ、物語の中で、星奏の全力が直接描かれることはありません。あの日、星奏に届かなかった言葉を抱えながら、全力で彼女を追い続ける洸太郎が描かれ続けています。その姿もまた、胸を打つ。

 

 

 物語の締めくくり。

「けれど、それでも俺は、まだ、もう少し、全力で言います。あなたに会いたい。あなたが好きです」

 どこにも辿りつけなかった洸太郎は、かつて自分の言葉が届いていないのだと思っていた少年は、理解します。思ったような、願ったような形でなくても、自分の言葉はあの日の彼女に届いていて……彼女が一時でも、それで慰められたとしたら。自分の言葉は、決して、無駄なんかじゃなかった、と。

 彼は、プレーヤーに入っていた彼女の音楽を受け取り、眠りにつく。

 それは、きっと、戦士の休息みたいなもので。

 

 想起されるのは、駆け抜けた戦場。

 全力で生きたからこそ、輝いている日々。

 けれども、それじゃあ俺達にできることは、ただ全力であることなんだろうか。

 

 そうして、目を覚ました彼の世界に最初に映るのは──。