はじめのはじめ

二次元傾倒な日々。

雑記。

 『薬屋のひとりごと』2巻読了。

 これ、読んだ人にしか伝わらないけれど「牛黄をください」のシーンで、笑いながら泣いてしまった。この感情は、いったいなんだろう。“面白い”のはもちろんそうなのだけれど、“満たされる”とは違うし、“美しい”は近いと思うのだけれど、少し違う。しんみりとしたお話を、しんみりと終わらせない。構成を言葉にするなら、それだけのことなのに。

 お話というのは結ばれるもので、また、結ばれなければ成立しない。けれど、どこで結ぶかはそれを語る人が決めることができる。この巻のエピソードも、『猫猫が後宮の外壁の上で、遠くにひかる花街の明かりへ向けて見送りの舞を踊る』という、寂しくも美しいシーンで締めくくることもできる。けれど本作では、文章はそこからさらに続いていき、猫猫のとぼけた台詞──本人はいたって大真面目なのだろうが──と、それに振り回される壬氏とのやり取りまでを物語の衣で包み、ふわり、と優しく結ばれる。

 どちらが優れている、というつもりはないし、優劣をつけることに意味はないだろう。けれども俺は……いろいろな人がすれ違い、傷ついて、後悔しながら、それでも進んだこの物語が、猫猫がただ独り舞う場面でなく、未だに頓珍漢なやりとりをする猫猫と壬氏の掛け合いで結ばれたことが嬉しくて、だからこそ笑ってしまったし、泣いてしまったんだと思う。