はじめのはじめ

二次元傾倒な日々。

『ハミダシクリエイティブ』プレイ日記。その2

 あすみ可愛いいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃ!
 いや、引きこもりでコンビニぐらいでしか人と会話しない人間が、肉まん譲ってもらったからといってわざわざ異性を追いかけてまでお礼を言って一緒に公園のベンチに座って半分こなんてするわけないだろ……とかいうツッコミなんかどうでもいいぐらい可愛い! 色素の薄い青色のような銀髪、150cmにも達していないように見える背丈、華奢な肩幅、ぼそぼそとした口調、身体の前に手を持っていく癖、相手の気持ちを考えることができる優しさ、引っ込み事案だが、積極的な一面もある。なんだろう、一部のプレイヤー(オブラート3重くらいの優しさ)の好みをヴォーパル武器でバフ盛り盛りクリティカルですわ、みたいな女の子。そして、不登校である、と。相手の気持ちを考えすぎてしまうとか、なんらかのトラウマで人と面と向かって対話することが苦手とか、それなりの背景があるんだろう。
 
 妃愛、さっそく「ばーかばーか」って言ってきた! これは「ざーこざーこ♡」も時間の問題だな! そして朝から制服姿を見てもらいたくて兄の部屋にくる妹は可愛い。
 
 妃愛と華乃のファーストコンタクト。
 いやー、華乃いいなぁ。学校の廊下では落ち着かなくて上手く喋れてないのに、生徒会室に入って主人公と二人になった途端、安心したように軽口を言う。この内弁慶さがいい! SにもMにもなりうる性格してる。きっとあがり症で、しっかり準備したことでも本番でパニックになって実力の半分も出せないんじゃないかな。あと、緊張するとすごく汗っかきになる、とかだったらいいなぁ。んで汗の臭いがしないかすごく気にしてて制汗スプレーとかウェットティッシュを常備してるとさらに良い。
 あと妃愛が外では『お兄ちゃん』呼びになってる。これがやりたかったのか。なるほどわかる。猫かぶり系の妹、スバラシイ。
 
 華乃が推しイラストレーターと判明してからのやり取り、お腹にマジックペンでイラスト描くところに癖が出てるなあ。そして3人であすみを勧誘に行く流れに。あすみんにデレデレの主人公に対して、自分たちと対応が違うと怒る妃愛と華乃。わかる、わかるぞ主人公(そっちか)。猫かぶり系妹の妃愛と、即落ち2コマ系の華乃(本日の最悪な例え)とは、根本的に扱いが違うんだよ。
 あー、でも妃愛。冗談めかした口調で「わたしの制服姿は褒めてくれなかったのに」って言ってるけど、これはけっこう落ち込んでるんじゃないかな。わざとらしいお姉さま口調でごまかしてるけどさ。久しぶりに制服着たんだよな、しかも『制服が可愛いから』という理由で少なくとも2人はその学校を選ぶような、そんな制服を。そりゃあお兄ちゃんに「可愛い」って言ってもらいたいだろ……。
 
 おっ、兄妹過去回想きた。
 両親が亡くなっている。兄は妹をなんとしても守っていくと決めた。妹の稼ぎで生きていける状態だが、妹は兄がいてくれたから頑張ってこれた。親戚筋はひとりを除き絶縁状態。なるほど、わかった。
 
 主人公の言動や行動にブレが感じられて、あー気持ち悪いなぁ、このシナリオライターを信頼することができるのかなぁ、という疑心がこみ上げてきてたけど、ここまで読んでようやく向き合い方がわかってきた。主人公のことは『妹第一の行動をとるけれど、ちょこちょこノンデリオタクのような失敗をする奴』、くらいにふわっと把握しておくのがちょうどいい。ヒロインの可愛さを惹きだすために必要な役割をはたしている、と考えよう。
 幸い、ヒロインに対してブレは感じられないので、このまま読んでいけそう。

『ハミダシクリエイティブ』プレイ日記。その1

 エロゲがやりてええええぇぇえぇぇぇ! と自分の中の欲求が爆発したのでFANZAで購入した。なお、セール中などでは一切ないため、ガッツリ定価。八千八百円也。たっっっっっっっっっっっか!!
 ……いや、いいんだ。俺はただ、エロゲがプレイしたいだけなんだ。右頬をぶたれたら左頬もさしだす所存なんだ。だから、いくらでも払うから面白いエロゲを読ませてくれ。
 
 冒頭。
 いきなりスマホゲーのガチャで沼っている主人公から始まる。そういや俺も今日、ブルアカの3周年ガチャで沼ったよ。70連で星3がひとり。それもピックアップされてるアコじゃなかったよ。でも運が悪すぎるという主人公よりはマシだな。と思ってたら金髪巨乳の妹がよちよちしてくれてる。しかもガチャ代を出してもらってる。全然マシじゃなかった。というか『妃愛』ってなんて読むんだ? あっ、『ひより』らしい。うん読めねえ! ちなみに兄の呼称は『お兄』だった。とくに興奮はしない。個人的には『兄さん』、『お兄ちゃん』あたりがいいよね。まーすげえ甘やかしてくれてる。お兄ちゃんをダメにするタイプの妹なのかもしれない。でも、セックスのときは「お兄のざーこ♡ ざこチンポ♡ 妹マンコでイッちゃえ♡」とか平気で言いそうな顔してるんだよなぁ(最悪な第一印象)。なんだろう、メスガキが成長して落ち着いたらこんな感じになる、みたいな。甘やかしからのメスガキ、通称『あまメス』という新ジャンルを開拓してくれるのかもしれない。
 んで、どうやら妃愛(変換できない)は超人気声優らしい。妹に「あのキャラの声で言って」とかいう兄はナチュラルに気持ち悪い。どうせセックスの時も頼むんだろ。ふざけるんじゃないよ! せっかくの素の妹を堪能しろよ!
 あと妃愛(IMEユーザー辞書に登録した)、ほっぺたすげえ柔らかそう。
 
 そんなこんなで学校へ。妹は一日収録とのこと。どうでもいいがスマホゲーとかVtuberとかさらっと出てくると、最近のエロゲだなあと感じる。
 カーストラノベみたいな茶々が入りつつ、くっそ寒いノリで主人公が生徒会長になってしまい、不登校の生徒を集めて生徒会を結成するということになった。わからないが、そういうことだ。舞台設定の組み立てかた雑すぎないか?
 前向きに考えるなら、いっそ清々しさまで感じる。なるほど、クリエイティブな仕事をしているがゆえに不登校、というヒロインたちと関係性をもつことが大事なのであって、そこまでの流れはプレイヤーが気にするところでは無い、と。
 で、二人目のヒロイン、華乃(やった、変換できる)に会いにいく。木刀を構えながらたこ焼きを食べているというイベントCGから始まるが、きっとヒロインなのだろう。どうやらイラストレーターらしい。……ん? この娘、あれか? 幼なじみ……いや、違うな。子供の頃からの付き合い、まではいかない。昔馴染み、ぐらいの距離感か。いいねぇ! 昔のエピソードを覚えてたり忘れていたり拗らせていたりすると最高なのでよろしくお願いします。そういうセピア色の空気の中で深呼吸したい。あと、生徒会への勧誘のために妹の身バレをする兄、クズである。
 
 んなわけで今日はここまで。あー、1日1時間もプレイ時間とれないけど、ぼちぼちやっていけたらいいなぁ。

20240110

 お兄ちゃんが寝ているところでオナニーしちゃう妹さんの話を考えています。
 異世界転移しちゃったお兄ちゃんが、魔王なりなんなりを倒して元の世界に帰ってくるわけです。元の世界では3年くらい経っているわけで、オナニーも知らないJSだった妹さんもエッチなことに興味深々なJCになっているわけです。時の流れはかくも残酷なもの。
 お兄ちゃんはようやく平和な日常をおくり始める……ことはできず、悪の組織に狙われているクラスメイトのツンデレ美少女を助けたり、世界征服を企むロリババアをシバいたりと、いろいろなトラブルに巻き込まれていきます。
 そんなある日、自室で寝ているところに妹がこっそりと入ってくるのです。
 お兄ちゃんは異世界で寝込みを襲われることが多かったので、熟睡していても周囲に気配を感じると覚醒してしまう体質になっており侵入に気づくのですが、妹の意図がわからない。そこで、なんかすごいスキルを使って、寝たふりをしながら自身の周りを俯瞰で観察するわけです。
 すると、しばらく逡巡していた妹さんですが、何かを決心したようにパサリとパジャマを脱ぎ、お兄ちゃんのふとももに自分の秘部をこすりはじめるわけです。パンツごしに。そう、パンツごしに。
 最初は何をしているのかわからなかったお兄ちゃんですが、妹の下着が湿気を帯び始めたところで、ようやく理解します。そう、異世界でもまれに経験した……これは、陰部に毒薬を仕込んで相手を暗殺する技なのだと!
 今すぐ起きて妹を問いただすことは簡単だが、それではバックにいるであろう黒幕の正体はわからない。幸い、自分はあらゆる毒物に耐性を持っているので、このまましばらく泳がせておき、自分が死なないことに焦った妹が黒幕に接触しようとするところを取り押さえようと考えるのがベストだと、お兄ちゃんは思い至ります。
 翌朝、妹さんはもじもじした様子で聞いてきます。
「に、兄さん。その……昨日はよく眠れましたか?」
「ん? ああ。自慢じゃないが、俺は一度寝たら翌朝まで何があろうと目覚めない体質なんだ」
「ふーん、そうですか……まったく兄さんはだらしないですね」
 何か考えている様子の妹にお兄ちゃんは内心でつぶやきます。──残念だったな、妹よ。俺には毒は効かないんだ。
 昼。学校をボイコットして妹を尾行していたお兄ちゃんですが、どうやらまだ黒幕と接触する様子は見られません。どうやらこれは長丁場になりそうです。
 そして、夜。
 またしても部屋に忍び込んでくる妹さん。どことなく昨夜よりもしっかりした足取りです。今夜はパジャマだけではなく下着も脱ぎ、ふとももに擦りつけてきます。しばらくは行為を続けていた妹さんですが、ふと思いついたようにお兄ちゃんの手を掴み、その指を自分の秘部に持っていき──。
 
 と、そんな感じです。ちなみに、翌日はお兄ちゃんの顔でオナニーして、その次はお兄ちゃんのを咥えながらオナニー。そしてその次が、はじめてのそうにゅうです。なんやかんやで最終的に、お兄ちゃんは悪の組織を壊滅させることに成功。そして妹にあの行為は何だったのかと質問し、真っ赤になった涙目の妹さんにボコボコにされてハッピーエンドです。
 今年の俺の目標は、この作品をどこかのライトノベル新人賞に応募することです。何卒よろしくお願いいたします。

20240106

 フリーレンの最新話観ました。端的に、すげえ良かったです。第2クールの初回ということもあって印象的なエピソードを持ってきた感じ。ザインが自ら選択して自分の道を往くこと、そしてフリーレンが人間の成長の速さを知っていること。それらは、共に旅をしたからこそ得られたもの。
 ほとんどの物語において『変化』というものはカタルシスの要なのだろうけれど、葬送のフリーレンについては、それがより顕著に現れるというか、そう設計されている。もちろん、長命種であるフリーレンによって。長い年月の中で風化していくもの、残っているもの、形を変えて続いていくもの。フリーレンという眼を通して、そこにある変化を描写していくのが、この旅の肝なのだから。
 けれども、今回のエピソードはその舞台装置を使っていない。
 フリーレンに背中を押されて共に旅をしてきたザインは、自らの意思で、征く先を決定する。そこには長命種も短命種も関係ない。ただ、仲間とともに旅をしてきた過程が、彼に変化を与えたからだ。ごく当たり前でありふれた、使い古された話。俺にはそれが、たまらなく愛おしかった。
 
 あと、新オープニングめっちゃ良くないですか?
 昔からヨルシカ(というよりn-buna)の曲にはやられてるんですけど、今回のは好みドンピシャでした。サビで流れる一級魔法使い試験編の映像もあいまって素晴らしい……ひたすらリピートしてます。

20231229

 16bitセンセーション、最終話みました。
 全体的には面白く視聴し続けることができてたと思います。というのも、俺はアニメを継続視聴することが苦手でして。あれです、1週間待つことができない人間。面白いと感じて続きが気になったら、待ちきれずに原作を買って読んでしまう。で、先の展開が分かってしまうと、アニメは次話から見なくなる。そういう意味では、オリジナルのアニメというのは親和性が高いのかもしれない。花咲くいろはとか、TARI TARIとか好きだったし(いつの人間だ)。
 それで、16bitについてですが。
 クライマックス数話の話の流れは、賛否あると思うのですが個人的にはまあ許容範囲でした。創作という熱エネルギーの話とか、そこに絡めて最近話題のAIを用いた作品とか──今の我々がいる場所が今後の創作の未来を決める分水嶺なんだ、っていうメッセージみたいなものも感じられましたし。ただ個人的に気になったのが、最終的にコノハが着地した未来、なんですよね。あれはあれでハッピーエンドだと思うのですが、なんというか……この物語の最高点ではないんじゃないか。例えるなら、『トゥルーエンドがあるエロゲでグッドエンドを視せられているときのモヤモヤ』がわりと近い。もうちょっと突き抜けた、大団円のようなハッピーエンドでも良かったんじゃないかと思いました。アルコールソフト全員集合して、冬夜もいて。みたいな
 まったく関係ないのですが、アレを思い出しました。ISLAND。とびっきりの名作でしたよね。最後、普通にプレイしててエンディングが流れて、「あーこれで終わり、か?」みたいになってCG一覧開いたら、どう考えてもトゥルーっぽいとこが埋まってないんですよ。最後付近の連続選択肢が分岐になってるの明確じゃないですか。発売日に購入して夢中でプレイしてたから攻略サイトも出てないし、選択肢当たり直して、「あぁ、そういうことか。進んだぞ……ってマジか!」と驚いたのはいい思い出です。あのライターの作品、『ひまわり』から世界観を共通にしてるんですよね。小説のなんちゃらわーるども、同じっぽかったし。新作出さないのかな。

20231228

 風邪をこじらせていました。
 いやー、年末で仕事が忙しいわけじゃないですか。それで、ちょっと熱っぽいなー、でも休むほどでもないよなー、程度の体調だったんで、解熱剤飲んで仕事してたんですよ。体感的には37℃前半くらい。で、定時であがって早めに寝るかと思って、念のため熱測ってみたら38.7℃。表示を見た瞬間、さーって血の気が引くのを感じますよね。
 で、次の日。
 解熱剤飲んだ状態で37℃以上だったんで、職場に休みの連絡を入れて、インフル流行ってるんで検査しないとまずいよなーと薬局で抗原検査を買って試したところ、インフルもコロナも陰性。とりあえずひと安心。病院の負担軽減という側面もありますが、薬局で買えると便利ですよね。近場の発熱外来に電話しまくって予約を取る手間が省けるのは精神的にすげえ楽。
 結局、先週の土曜日、日曜日で回復して、今週は溜まった仕事をなんとか捌いていました。で、今日で仕事納め。結構減らしたと思うので後は頑張れ、来年の俺。
 
 休みの間、暇だったのでswichでゲームをダウンロードしてプレイしてました。オクトパストラベラー2。前から気になっていたんだけど、なんか手を出していなかったやつ。いや、RPGってほら、時間かかるじゃないですか。エロゲみたいに好きなルートクリアして終わりってわけにもいかないし。そんなわけで最近は全然RPGをプレイしてなかったんですが……見事にハマりました。くっそ面白い! 別々の使命を持っている8人の主人公が合流し、すきな順番で物語を進めていく! ある程度物語を進めると、主人公2人が関わるクロスストーリーも発生する! 主人公ごとに使用できるフィールドアクションを駆使して、自由度の高いプレイングが出来る! 3日間で大体20時間ぐらいプレイしてしまった。休めよ、俺。
 
 そんなわけで、12月22日に発売したONEのリメイクはダウンロードしたままプレイしていません。いずれ、まとまった時間にプレイしようと思います。

20231213

 活字苦手も直り、少女は大人になった。
 
 ヘブンバーンズレッドの『夏気球』から。最近の麻枝准の中でも随一の歌詞だと思う。
 ちなみにゲーム自体はかなり序盤で止めてしまったので、この曲がどういう場面で流れるのかはわからない。
 だから、以下に綴るのは単なる妄想だ。
 
 少女の祖父は図書館司書だった。長らく県立の図書館に勤務していたが、定年退職した後も家の近所にある町立図書館に非常勤で勤めていたのだから筋金入りである。
 世のおじいさんのご多分に漏れず、祖父は少女のことを目に入れても痛くないほど可愛がっており、休みの日には子供向けの物語を読み聞かせたりしていた。
 
 少女は、そんな祖父の声が好きだった。
 元気溌剌な主人公の男の子、相棒の気弱な子供ドラゴン、不愛想だが仲間想いのドワーフ、お調子者の妖精。個性豊かな旅の面々を見事にひとりで演じ分ける声も好きだったし、そよ風が流れる草原や光射さぬ鬱蒼とした森の風景を語るときの、いつもの祖父の声も大好きだった。同じ物語でも、母親に読み聞かせてもらったり、自分で読んだりするよりも、祖父の口から語られるほうが何倍も面白く感じられた。
 
 だから、当然の帰結というべきか。
 少女は、自分で物語を読むのが苦手になっていた。同じ話であるはずなのに、自分で読んでしまうとどこか、色褪せてしまう。最初は休日だけだった音読会は、いつしか毎晩のように開催されるようになった。もっと、もっと──とせがむ少女に、祖父は嫌な顔ひとつみせず、笑顔で「続きは明日のおたのしみ」と言うのだった。
 
 ある日の晩、いつものように祖父は「また明日」と言い、本を閉じた。
 けれど、明日が訪れることは無かった。
 朝、なかなか起きてこない祖父の様子を見に行った少女が目にしたのは、物言わぬようになっていた祖父だった。安らかな顔だった。秋雨が降っていた。
 
 葬式が終わってしばらく経ち、冬がやってきた。少女は雪の中を歩いた。
 雪が融け、春がやってきた。少女は桜の中を歩いた。
 木々が青づき、夏がやってきた。少女は陽射しの中を歩いた。
 本を開くことは、なかった。
 
 そうして季節はめぐり、何度目かの夏がやってきた。
 中学生になった少女は、学校から帰ってくるなり「暑かった~」とセーラー服のタイを引き抜いてパタパタと扇ぐ。
 そんな少女に、母親が言う。かねてから少女が欲しいとせがんでいた自室について、祖父の部屋だったところを片付けて使うのはどうか、と。
 
 あの日から一度も開けたことの無かった祖父の部屋の前に立つ。
 深呼吸ひとつ。ガチャリ、とドアを開ける。鼻腔をくすぐったのは、懐かしさだった。
 古めかしい本の匂い。
 きっと、母親がこまめに掃除をしていたのだろう。両側の壁に設けられた本棚や、窓際にあるテーブルの上には、埃ひとつ見られなかった。
 そうして部屋の中をゆっくり見まわしていた少女は、はっと息を呑む。
 いつも祖父が物語を読み聞かせてくれていたソファの脇。サイドテーブルの上に、あの本が置かれていた。
 おそるおそる、手に取り、ソファに身を預ける。
 栞がはさまれていたページを開くと、あの日の冒険の続きが、色鮮やかに戻ってきた。
 
 主人公の男の子が「久しぶり!」と手を差し出し、子供ドラゴンが「ま、待ってたよ」と微笑み、寡黙なドワーフが「息災じゃったか?」と肩を叩き、お調子者の妖精が「もう戻ってこないかと思ってたわ」と毒づく。
 そして、風景を語る声は、懐かしい祖父のものだった。
 
 しばらくして部屋から出てきた少女に、母親は洗い物をしながら「何か片付けてほしい物はある?」と語りかける。
 少女は首を横に振り、寝室から自分の布団を抱えてくる。
「あのままでいいよ。ありがとう、お母さん」
 そう言って、新しい自室に戻っていく。
 その後ろ姿を見て、明日の朝はきっと寝坊確定だな、と母親は苦笑するのだった。
 
 活字苦手も直り、少女は大人になった。