はじめのはじめ

二次元傾倒な日々。

景の海のアペイリア、はじめました。

冬休み。静かに雪が舞い降りてくる朝に、俺はこの雪が過去と同じなのか確かめるべく──
懸命に、そう、ただただ一心不乱に──

公園の草むらでオナニーをしていた。

 ふっざけんな! 冗談抜きで漫画的描写みたいに噴きだしたのなんて久しぶりだよ! しかもなんかBGMも無駄にシリアスだし!

 はい、というわけで、景の海のアペイリアはじめました。面白いと話には聞いていたのですが、うん、これはやばいです。

 

 雪が降っている。過去が降り積もっていく。雪が融けるように、降り積もった過去が消えてなくなっていく。みたいな感じで物語のイントロダクションがはじまるわけですよ。こっちは「あー、冒頭のシリアスなモノローグで重要な伏線や主人公の目的を印象
づけようっていうパターンだな」って身構えるじゃないですか。雪のように融けていく過去を少しでもつかみ取ろうと、離すまいと、必死に搔き集める主人公の様子が脳内にイメージされる、その刹那にオナニーですよ。……もう天才的としか言いようがない。

 そこからさらに、

「精液は数mも飛びません」
「それはどうかな。俺としては4m20cmジャストってところが問題だと思うがな」
(中略)
「残り10秒です。間に合いますか?」
「問題ない。射精のコントロールには慣れている」

 といった頭のおかしいやりとりが、怒涛のように押し寄せてきて、俺の頭の中は一瞬で真っ白に染まりました。ついでに主人公の精液は通りかかった女の子にかかって、彼女の顔を白く染めました。

 そして場面転換、状況説明が入って、オナニーには意味があったことが明らかになるわけです。ほんと、こんなに惹きつけられる冒頭って他にはちょっと見たことないです。ほんと上手いなぁ……。いや、オナニーはオナニーだよ。公園オナニーは犯罪だよ。通報だよ。

 そしてお約束のように、白い液体をかけられた女の子は、新しく一緒に暮らすことになる義妹という……。この義妹(三羽)がまた魅力的でして。

「こ、心を込めないでくださいっ!次、感謝したら、一緒に食べてあげませんよっ!」

 この台詞を聞いた瞬間に「あー、こりゃやばいやつだ」ってなりました。言葉選びのセンスって、こうもわかりやすく表出するものなんですよね。まあ、一番印象に残ったのがこの言葉ってだけで、三羽がどういう人間かについては初対面で変態と言われてから、家で再開した場面の会話で十分伝わってはくるんですよ。相手のことをよく理解しようとしていて、けれどそれを適切な言葉で表現するのが苦手で、それでいてひたすらに真面目に世界と向き合っている。「そこにどこか『諦め』のような感情が混じっている」……という部分については俺の邪推かもしれませんが、とにかく三羽という人物像がものの数分で心の中にストンと落ちつく。

「……兄さんは、ただ気持ち悪いだけじゃなくて、どうしようもないぐらい馬鹿なんですね」

 これ、誉め言葉なんですよ……すごいですよね、ときめきますよね。流石に零一には誤解されるわけで、その時に小声で「褒めたのに……」って言うんですが、読んでいるこっちは「そんなこと言われなくても分かってるよ」となるわけです。物語開始早々にもかかわらず。すさまじい筆致です。

 ……っと、三羽も可愛いんですが、もちろんアペイリアも可愛いです。初期状態の無機質な声で冷静なツッコミを入れる様も好きでしたが、自我を持ってからどんどん可愛くなっていきます。なにこの小動物みたいな子。零一の役に立ちたい、誉めてもらいたいというのが第一行動原理なの、可愛すぎる。

 あと、はじめての感情を覚えるときの描写もすごくいいです。ここまでの一番のお気に入りは「アペイリアのやりたいことが最優先」と零一に言ってもらえたときの、よくわからない感情に包まれてちょっと言葉を失ってから、嬉しげに照れたような声で喋るアペイリアですね。ダントツにここがやばいです。心の一枚絵に刻み込んでおきましょう。

 プレイしていてどうにも我慢できなくなったので、中途半端ですがここまで書いておきます。いやー、まだオープニングまでも進んでいないのですが、それでもこの作者が信用に足るであろうことは疑いようがないですね。これは面白すぎます。進めるの楽しみだー。