はじめのはじめ

二次元傾倒な日々。

『お兄ちゃんはおしまい!』の感想とか。

 『お兄ちゃんはおしまい!』の3巻が出ていることに気づいておらず、本屋でたまたま見かけてびっくり。すかさず購入して1巻からまとめて再読してました。あ〜、幸せだ。

 読んだことのない方にざっくりと概要を説明しますと、まひろっていうお兄ちゃんに、みはりっていう妹がいるわけです。二人の両親は海外に住んでいるらしく、兄妹はしばらく二人だけで暮らしていました。みはりはいわゆる天才というやつみたいで、中学卒業後に飛び級で大学に進学しちゃうような子。そんな妹を持った兄のまひろは、ご多分にもれず、周囲のプレッシャーに耐えられなくなり引きこもってしまい、エロゲ三昧の生活。みはりはそんな兄を更正させるために、食事に一服盛るわけです。開発中の新薬、女の子になってしまう薬を。物語は、お兄ちゃんが『妹の妹』になってしまうところから始まるわけですね。うん、新しい!

 まあとにかく、ニートなお兄ちゃんを更正させようと頑張ってるみはりが可愛いし、なにより女の子になっておもらし癖がついちゃったお兄ちゃんが可愛すぎるし、もう読んでて「んへへ〜」とか言って転がること必至な漫画というわけです。よくわからない人は読んでみましょう、気がついたら奇声をあげながら転がっているはずです。

 以下、俺の目から見たこの兄妹のことをつらつらと。

 まひろが引きこもったのは、物語冒頭から二年前。おそらく、みはりの飛び級進学が確定したあたりだと思います。両親がいつから家を空けていたのかはわかりませんが、少なくとも二人暮らしが始まってからの家事は、すべてみはりがやっていた。ご飯は一緒に食べていましたが、兄妹間の会話は少なかったみたいですね。1巻の中で何回か、みはりがまひろの部屋に入るんですけど、決まってすぐ追い出されるんですよ。「立入禁止!」って。これ、きっと昔はそうじゃなかったんだろうなぁ。みはりが満点のテストを持ってきて誉めてもらったり、学校で作ってきたクッキーを持ってきて一緒に食べたりしたのは、きっとまひろの部屋だったんじゃないかと思います。そんな思い出が詰まった部屋が、いつからか、まひろが引きこもる空間になってしまった。……まあ、まひろからしてみればエロゲやらエロ本やらが大量にある空間に妹を置きたくなかったのかもしれないけれど。

 みはりはただ、お兄ちゃんに誉めてもらいたくて頑張ってきただけで。けれど、みはりが特別になっていくにつれて、まひろは周囲の視線を感じるようになってしまう。できる妹と、その兄という立場。……それでも、まひろはみはりに八つ当たりはしなかったのだと思います。それは、物語冒頭、自然に会話をしている二人の様子からも読みとれます。けれど、昔のような距離感で妹を褒めることは、できなくなってしまったのでしょう。

 そう、まひろって、見ず知らずの誰かから『期待』されることを恐れているんですよね。変に期待されないほうが、安心できる。2巻で、初めてあさひとみよに会ったとき、「ぐうたらでポンコツで人見知り」と言われて逆に安心したように、3巻でテストの結果が悪かった時のように。もともと人見知りのきらいはあったのでしょうが、さらに『天才の妹の兄』という立場から無遠慮な期待を背負うようになってしまい、ついには引きこもってしまった。誰が悪いというわけでもない。ただ、みはりの頑張りは、一番褒めて欲しかった人には届かなかった。それは解決していないから、きっと今でも、みはりの深部にまだ眠っているはずです。そういう感情に気づかず、または勘違いして「お兄ちゃんを更正させなきゃ!」という思いに変換したところが、この物語の見えないスタートラインなのだと思います。お兄ちゃんに、「よくやった」、「えらいぞ」と褒めてもらいたい。そんな未来を目指して。

 余談ですが、物語中でみはりが泣いたのって、まずはまひろが倒れた(注:生理による)とき。続いて、風邪をひいてまひろに看病してもらったとき。そして、まひろが早起きして出かけたとき。なかでも一番印象的なのは、看病のシーンです。みはりは、やっぱり不安だったんですよ。お兄ちゃんと昔みたいに話せなくなったのは、お兄ちゃんにとって自分はもう大切じゃないからだろうか、って。自分は邪魔になってしまったのかな、って。……だから、風邪をひいたみはりのために、普段家事をまったくしていなかったまひろがお粥をつくってきたとき、みはりが泣いちゃうのはすごく自然に映りました。子供みたいに「うぇぇぇぇ~ん……」って泣いてるみはりを見て、ああ、やっぱりそうだよなぁと納得できた。実は、3巻でまひろに頭を撫でられたときも、泣いちゃうかなと思ったんです。けれど、やっぱりあのタイミングでは違うよな。泣いちゃうとしたら、お兄ちゃんに戻ったまひろに撫でられたときで。そしてそれは、きっとこの漫画が終わるとき、なのだと思いました。

 なんやかんや書きましたが、この漫画、寝転がりながら何度も読んでたらいつの間にか休日が終わっているくらい面白い漫画なので、とてもおすすめです。