はじめのはじめ

二次元傾倒な日々。

はしりがき(ハナヒメアブソリュートの話)。

 ハナヒメアブソリュートをプレイしている。進行状況はポリーナルートが終わり、メアルートに入った、といったところ。
 ストーリーについては今のところ特筆すべき点は無く、ポリーナルートは、うーん、普通。普通にイチャイチャして、普通に結ばれて、危機が起きて離別、再開。まあこのチームのゲームは(前作であるクルくるもそうだったけれど)かんなぎさんの描く可愛らしいキャラ達のやり取りとか、爽快なバトルシステムが売りだと思うので、ストーリーはオマケ程度でも良いとは思う。
 キャラクターは本当に可愛く、どのルートから読むか迷うレベル。可愛さを追及したらこうなりましたぜ、というような。天真爛漫な幼なじみだとか、お兄ちゃん大好きアピールの激しい妹だとか、ちょろいお嬢様だとか、テンプレート通りにも関わらず立ち絵と声、そして会話のテンポがハマるとここまで魅力的になるのかと。あと、個人的にキャラの肌の質感が大好きで、瑞々しいといえばいいのか、張りがあるといえばいいのか。イベントCGが強い! 差分は少なめだけれど、力は入ってる。
 惜しいなと思うのは共通部分の短さ。共通部分って、いうなれば日常生活の積み重ねであって、そこにウエイトをいくらでも割ける(いくらでも、は言い過ぎか)のがこの業界の強みだと考えている。ぶっちゃけ、共通のドタバタ日常が一番好きなのじゃ、というような人もいるだろう。可愛い女の子達との日常生活。キャラクターの魅力を十分にアピールすることの出来る部分が短いのは辛い。積み重ねた時間は、思い入れに直結する。keyのゲームがまさにそうだった(あれは共通部分では無かったが)し、そして明日の世界よりみたいな、日常が変わっていくことを描いたゲームもあった。
 
 主人公について。前作のシンくんを越えられていない感がある。両者ともハーレム形成系の主人公ではあるけれど、性格の違いが大きいか。エッチでバカだけど明るくていざというとき頼りになるという(さすが丸谷作品主人公!)シンくんは、皆のために行動する生徒会長で、だからこそ周りも彼に惹かれ、協力してくれる。それがバトル部分でのシンくんの能力にもなっているわけで、まさにリーダー。
 今作の主人公である虎春くんも、束ね戦う者ではあるんだけれども、そのあたりのバックボーンが無い(今のところは見つからない)。もっとも、彼はゲームを本気でプレイすることについて葛藤しているというか、過去の出来事を引きずっていて、それがストーリー上のポイントになっている節はある(ポリーナルートでは触れられていないが)。なぜ彼が王なのか、それはトッププレイヤーであるということ以外に理由があるのか。読み進めていく内に、答が明かされるのかもしれない。

千恋万花ムラサメルート感想(ネタバレあり)

将臣「君がこれ以上、一人で泣いているのは嫌だ。

どうか、人として生きて、いや生き直して。俺といっしょに……!」

俺は再び、目の前の少女を抱いた。

懇願した。

俺と生きて欲しい、と。

 

──刀が紡いだ、500年後の出会い。

 

 

 ゆずソフト最新作『千恋万花』をプレイしています。前作サノバウィッチの感想を書いていたのが1年半前、もうそんなに月日が経ったのかとしみじみ感じます。例のごとく、どのルートから読むか迷ったのですが、メインだと思われる芳乃以外で一番好みのムラサメから始めました。御神刀“叢雨丸”に神力を纏わせるため、500年前に人柱になった女の子です。

 このルートでは、共通部分と個別部分がしっかりと別れていますね。穂織の地に根付いている呪いとの戦いを描いた共通部分、御神刀を奉納しムラサメが人間へと戻る個別部分。共通部分で大きく成長した将臣が、個別部分では皆に認められる村の若者の中心的存在となっていく姿をしっかりと見ることができます。

 

 有地将臣について。

 読んでいて、いいなぁ、と思ったのは、共通部分の終わり。祟り神も現れなくなって、将臣が穂織に留まらなければならない理由が無くなって……。彼の穂織での生活って、半ば強制的に始まったじゃないですか。今回訪れたのだって、母親に「実家の旅館を手伝って来い」と言われたものですし、朝武家での生活も、安晴が娘の青春を案じてのものだった。そんな彼に、ようやく選択の機会が現れるんです。生まれ育った都会に戻るか、短い間だったけれど色々な出来事を経験した穂織に留まるか。 

「にしても、欠片を取り込んでおいて、よく無事だったな、俺。下手したら、俺が祟り神になる……なんて可能性も……?」

「あったかもしれんな。ご主人が負の感情に取り憑かれれば、ご主人の魂も穢れた可能性はある。つまり、心の底から憎しみを抱くようなことはなく、幸せに周りに育てられたということだな」

「周りに……か」 

 今までの都会での生活も、周りの人たちに恵まれていた。だからこそ、平穏に暮らすことが出来ていたのだと理解する将臣。

 けれど── 

「……よし、決めた!」

もしかしたら、俺が期待しているような日々は、今後ないかもしれない。

でもそれも思い出だ。

俺はここで、得難い友人が出来た。それを大事にしていきたい。

「さすがに、婚約は解消だろうけど……」

まあ仕方ない。

新しく、作り直すさ。それも楽しそうだ。

 将臣の中で、穂織の人たちとの生活は、長年過ごしていた都会での生活に引けを取らないほど大きな物になっていた。いざどちらかを選ぶことが出来るようになった時、迷ってしまうほどに。

 なし崩しに始まった生活だけれども、それをあらためて見つめ、自らの意志で選択する。この過程があるからこそ、その後のストーリーで彼が穂織の村おこしのため努力する姿が、嘘くさく無く映るのだと思います。

 

 ムラサメという女の子について。

 恋を知らぬまま人柱となった。流行り病にかかり、いつ死ぬかわからない恐怖から逃げ出したくて、生きてほしいという家族の願いを踏みにじり人柱になった。

 そんな彼女が管理している御神刀“叢雨丸”は、朝武の家に保管されている。500年続く呪いにより、子供が女の子ひとりしか生まれず、その子も長くとも50年も生きられないという、朝武の家に。

 単純計算で、10世代以上ですか。自分が逃げ出した生活を、家族の営みを、間近で見ることになる。病と呪いの違いはあれど、自分と同じように長くは生きられない女の子が、けれど祟り神と戦い、懸命に生きていく姿を見ることになる。

 家族は、一緒にいるべきなんだ。自分は、なんと親不孝者なのだろう。

 心のうちは、想像に難くありません。

 これは罰なのだ。500年もの間、人と深く関わることが出来ず、心が冷えていくのは自分の不孝が招いた罰なのだと。ならば受け入れよう。人ではなく、語り継がれている“ムラサメ様”として、朝武家を、穂織の地の人々を見守ろう。夜空に浮かぶ、あの月のように。──だから、もし堪えられず泣いてしまうとしても、同類である月の前だけにしよう。

 そんな彼女の心を溶かすことの出来る少年が現れたのは、500年後でした。

 

 将臣とムラサメ、そして叢雨丸について。

 将臣が努力していた姿を最も近くで見ていたのって、やっぱりムラサメなんですよね。剣術の修行をしていた時も朝起こしていたのはムラサメですし、村おこしについて最初に動き出したのも二人だった。そして、祟り神と戦う時も叢雨丸に宿ったムラサメと一緒。本人たちも言っている通り、彼らは三位一体だったんです。

 まさに刀が紡いだ縁ですね。

 物語のラスト、叢雨丸を奉納する際、将臣とムラサメが感謝と寂寥感を胸に別れを告げた時、叢雨丸から言葉が返ってくる。共に戦った無口な相棒から、最後に、言葉が返ってくるんです。ありがとう。大儀でした、幸せになってください、と。

 叢雨丸は“普通”の御神刀に戻り、穂織の地を見守っていく。そんな場所で、将臣と“ムラサメ”であった女の子、綾は一緒に生きていく。ふたつの影を伸ばし、生きていく。三位一体ではなくなったけれど、そんな彼らの姿を想像すると、胸が温かくなりますね。

 

 余談というか妄想というか。

 季節は夏。穂織の夏も、きっと暑いのでしょう。綾も久しぶりに体験する夏の日差しに、「あつい~……あついぞ、ご主人~……」とか言いながら、ぐで~っとして。そんな彼女を将臣は、どこか嬉しそうに見ていて。頃合いをみて、田心屋にかき氷でも食べに行こうかと提案したりするんじゃないでしょうか。

雑記。あるいは、恋×シンアイ彼女について。

 感想を書く、というのは不思議な行為だと思う。

 大体の場合、物語を読んだ直後には、様々な感情が俺の中をぐるぐる渦巻いている。それら一つひとつはひどく不安定で、しばらく時間が経つと、霧のように散ってしまう。いや、本当は気づかないだけで、心のどこかに残っているのかもしれないけれど。とにかく、そんな不安定なものを壊れないようにかき集めて、感想という比較的安定したカタチにしていく。

 そうしていると、漠然としたものが手でつかめるくらいに実体を持ってくる。この感覚が、非常に気持ちいいのだ。モヤモヤしたものが、明確に自分をつくる一部分になった安心感。ふとした瞬間に、心の箱から取り出して眺めることができるような。

 先日、恋×シンアイ彼女の感想を書き終えた時にも、そういう感覚はあった。読んでいる最中は色々な感情にとらわれていたけれど、結局のところ、あの物語は『その先にあるものは、美しい光景であるべきだ』という、そういうお話だったのだ。幾億もの涙がつくるような、そんな世界で……報われない出来事があったとしても、全力で突き進んだ者が、その先で目にする光景。それは、闇ではなく、光である“べき”だと。

 カタチになったそいつを、とりあえずしまい込んでみたのだけれども、どうにも未だに熱を放ちすぎている。まったく、胸焦がれる物語だった。

『恋×シンアイ彼女』の話。(ネタバレあり)

 タイトルの通り、もっと具体的に言うと、國見洸太郎と、姫野星奏の話です。

 心の中に、散り散りとなっている感情の断片を拾いながら書いていこうと思います。それらが繋がって、感想、という創作になるかどうか。けれど、読んだ以上は、受け取った以上は、何かを書かざるを得なくなるような──そんな物語でした。

 

 胸の中に秘めた何かを伝えるために文章を書きだした少年と、彼の手紙を受け取り返事をせずに姿を消した彼女。運命的に再会した二人は──。そんなイントロダクションから描かれる本作は、予想もつかない方向へと進んでいきました。物語は、一途に星奏を想い続ける洸太郎の視点から語られています。ところが星奏ルートの最後、彼女がプロの作曲家として活動していたことが明らかとなり、洸太郎は理解してしまいます。姫野星奏の全ては、音楽にささげられていることを。この街に戻ってきたのは、スランプのためであって、また彼女は自分の元を去ってしまうのだということを。

 彼女の心に響くような作品を書く。そのために洸太郎は再び筆をとって。物語は終章へと続いていきます。

 星奏のために捧げられた日々。全力で彼女を追い続けた日々。

 星奏ルートでも、終章でも、書き綴られているのは、洸太郎の戦いの記録でした。

 終章の最後、洸太郎は、星奏へと全力で駆け抜けた日々を、思い返すととても美しく輝いている、なにものにもかえがたい宝物だと言っています。ついぞ、どこにも辿りつけなかったにもかかわらず。

 そして、それは星奏も同じであったろう、と。

 そこまで読んで、俺は、ああ──この物語は、星奏を全力で追い続けた洸太郎と、音楽を全力で追い続けた星奏の、戦いを描いていたんだ──そう思いました。

 全力で追い続けた者同士の、戦いの日々。どこにも辿りつけなかった戦士達の、戦いの記録。その光景は、眩しく美しい。グロリアスデイズ。

 

 音楽を選んだ星奏は、無遠慮な言葉を付け加えれば、洸太郎より音楽を選んだ。けれど、だからといって洸太郎の事が好きではなかったのか。決してそんなことはないでしょう。どちらもかけがえのないほど大切で、けれど、どっちつかずではいられない。そういう世界に身を投じていた。だから、音楽を選んだ。

 正論を言うのであれば、「ならば洸太郎に、きちんとそのことを伝えるべきだろう」ということになります。ただ……言えなかったんでしょう。彼女は、普段はやっぱりただの少女(SCHOOL GIRL)で、自分の気持ちを上手く言葉にする術がなくて、洸太郎に面と向かって嫌われることが怖かったんでしょう。

 

 そんな彼女だからこそ、終章では、手紙の形で、二度と洸太郎に会わないと誓う、という言葉を残したことが突き刺さります。彼女は、いったいどんな気持ちで、どんな顔をして、その言葉を書いたのでしょうか。ただ、きっと涙は流さなかったと、そう思います。そういったことは、罪悪感を抱えた彼女の、最後のプライドが許さなかったのでは、と。……蛇足ですね。

 ただ、物語の中で、星奏の全力が直接描かれることはありません。あの日、星奏に届かなかった言葉を抱えながら、全力で彼女を追い続ける洸太郎が描かれ続けています。その姿もまた、胸を打つ。

 

 

 物語の締めくくり。

「けれど、それでも俺は、まだ、もう少し、全力で言います。あなたに会いたい。あなたが好きです」

 どこにも辿りつけなかった洸太郎は、かつて自分の言葉が届いていないのだと思っていた少年は、理解します。思ったような、願ったような形でなくても、自分の言葉はあの日の彼女に届いていて……彼女が一時でも、それで慰められたとしたら。自分の言葉は、決して、無駄なんかじゃなかった、と。

 彼は、プレーヤーに入っていた彼女の音楽を受け取り、眠りにつく。

 それは、きっと、戦士の休息みたいなもので。

 

 想起されるのは、駆け抜けた戦場。

 全力で生きたからこそ、輝いている日々。

 けれども、それじゃあ俺達にできることは、ただ全力であることなんだろうか。

 

 そうして、目を覚ました彼の世界に最初に映るのは──。

『PRIMAL HEARTS』、はじめました。

 今年の冬は比較的暖かい、といわれているようですが、やはりこの季節になると朝の出勤が辛くなります。8月生まれの俺なんかは人一倍寒さに弱いので、寒い寒いと呟きながら駅まで自転車を走らせています。

 けれども、ぼやいたところで冬は始まったばかり。なんとか楽しく過ごしたいということで、『しろくまベルスターズ♪』でも再プレイして、冬の夜空を駆る彼女達に想いを馳せようとしたところ、近場のゲームショップには在庫がありませんでした。手ぶらで帰るのもしのびない、しかし『ゆのはな』の気分でも無い……。雪のなか両手を広げてはにかんでいるゆのはちゃんの前を通り過ぎつつ、目に入ってきたのは桜色──PRIMAL HEARTSのパッケージ──でした。

 目的の物が明確であるのに、買い物から戻ってきてみればまったく別の物を満足げに抱えている。昔からそういう経験はあるもので、『モンスターファーム』を買いに行ったけれど何故か『FINAL FANTASY TACTICS』を買って帰ってくるなど、目移りしてしまう性格は変わっていませんね。

 

 というわけで、PRIMAL HEARTS、です。

 

 主人公の転入先、間ノ島学園では保守的な方針の月華会、革新的な方針の天道会という二つの生徒会が存在しています。生徒たちから議題の提案があると、それぞれの生徒会が政策を提案、全校生徒の投票によってどちらかの案が可決されるというシステム。これまでは全くの五分五分だった状態が、主人公──帯刀和馬──の転入により動き出す。

 そんな、この業界ではよくある形式の学園の物語のようです。

 

 ストーリーは各話で区切られている方式で、とりあえず2話の終わりまで読んでみた上での印象を。

 主人公の和馬は、物語序盤で見せる作った“俺様キャラ”が抜ければ、よくいる好感触なハイスペック人間です。手詰まりの状態を、けれど解決へと導くことができる。いいですね。こんな頼りがいのある男なら、そりゃあ周りの女の子達も好きになってしまいます。話の流れとして、今は月華会寄りの相談を受けているので、3話以降は天道会寄りのストーリーが来るのでしょうか? そもそもルート分岐とかどうなってるのでしょう(ねこねこソフトのすみれの感想では、すみれルート本体を共通ルートと勘違いしてしまうという大失態を犯した人間)。

 まあ、あまり攻略サイトとか見たくはないので、普通に個別ルートに行けると信じて進めていきましょう。

 

 これまでの部分で印象的なのは、やはり、無理をしすぎて熱を出したゆづきの家に見舞いに行く場面。

 思っていることが顔に出てしまう性格の和馬に、『ゆづきにプリントを渡しに行くよう』に頼む本動堂(もとゆるぎどう!)先生。気配りのできる素敵な女性ですね。けれど何故か結婚できない崖っぷちという、これまたよくいる先生。

 そんな、先生にまで丸わかりで落ちつきのない和馬だから、きっと何を買っていけばいいか分からずに、熱が出た時に効果がありそうなものを手当たり次第に買い集めたはずで。だからドリンクやらバナナやらが詰まった、『ずっしりと重い買い物袋』を渡す和馬。「ちょうど近くの薬局で買った」なんて事を言って。

 けれどその薬局は当然ゆづきもよく利用する店で、そこにはドリンクもバナナも置いてないことを知っているわけで……。『きっと、必死になってかき集めてくれたんだ』と、その買い物袋を見つめ、じんわり胸を暖かくするゆづきがいて。

「キミってば、お母さんみたい」

 そうやって茶化しながら、きっと涙をこらえたゆづき。それに気づかずに照れくさそうに鼻をかく和馬。そして、「安静にしてくれ」と立ち上がり帰ろうとする和馬の服の裾を、思わずつかんでしまうゆづき。変な子だって思われなかったか、そんな心配しながら、けれど手は放したくない。

 そんなゆづきに、和馬は料理下手なのにおかゆを作るんですね。まさに“ベタ”ですが。いいじゃないですか。熱が出た時には、おかゆを食べるんですよ。

 

 見栄えは悪いけれど、胸に染み込んでいくような、そんな温かさのおかゆを「美味しい、ほんとに美味しい」といいながら頬張るゆづきは、自分をこんなにも心配してくれた和馬の顔を眺め胸に込み上げてきた想いを、おかゆと一緒に飲み込んでしまう。

 「ほんと、ありがとう」と俯いてしまったゆづきに、けれど和馬は、どう答えていいか分からずに「あまり長居するのもアレだし、そろそろ帰るな」と言ってしまう。

 このあたりのぎこちなさというか、認識していない感情が、非常に丁寧に読み取れて幸せでした。視点切り替えの上手さがよく活きていると思います。こんな瞬間を見ることができるから、エロゲはやめられないですよね! 

 というように、2話はゆづきがメインの展開だったので、3話以降はどうなるのでしょう。楽しみに読み進めていきたいと思います。

『りゅうおうのおしごと!』1巻の感想とか。

 さて、またしてもTwitterでつぶやかなくなった。観測範囲は極力狭めているのだが、それでも他人のヘイトに当てられてしまうことがあるので、あまり向いていないのかもしれない。あと、つぶやきという形式が苦手なのだろうか。なのでこちらにつらつらと書いていこうと思う。

 先週、朝刊を読んでいたら小説の紹介記事があり、白鳥氏の新作ラノベ『りゅうおうのおしごと!』が取り上げられていた。彼氏の小説は、『のうりん』を7巻くらいまで読んだ状態で止まっているが、テンポの良い文章と起伏の付け方が上手いことに起因するのであろう『読んでいて気持ちのいい小説』を書く人だなぁという印象。

 記事では、今回の新作の題材が『将棋』であること、綿密な取材から描かれるリアリティある物語、といったことが書かれていた。将棋。またコアな所だ。物語の設定としては、将棋界最高位タイトル『竜王』である主人公が、9歳のおんなのこを内弟子にするという。9歳。まあメジャーな所だ。
 早速本屋の新刊ラノベコーナーに赴き購入、その日のうちに読み終え、数日間再読していた。あとがきで『とにかく熱い話が書きたかった』と述べられている通りの内容で、ページをめくる手にも力がこもる。
 序盤、おしっこ。
 中盤、幼女研究。
 終盤、熱い展開。
 まったく隙の無い布陣である。文章も、のうりんの頃と比べて読みやすくなっていると感じた。不要な部分を極力排除し、くどい表現が無い。要するに読みやすい。
 将棋にせよ囲碁にせよ、子供の頃はむき出しの才能の争い……というイメージがある。歳を重ねると、研究や実戦経験によって培った技術が勝負の行方を左右することもあるだろうが、子どもにはその時間が無いからだ。この巻でも、9歳のおんなのこである『雛鶴あい』のたぐいまれな才能が描かれているわけだが、苦闘の末、研修会に入会することが出来たあいが、勝つことが全てという将棋の世界の中でどう揉まれていくのか。そして、あいと出会い不調を脱することが出来た竜王『九頭竜八一』は、あいと共にどう成長していくのか。今後が楽しみなラノベが、また一つ増えた。

スズノネセブン(代官山すみれルート)感想

 今更ながらスズノネセブンをプレイし始めました。何気に初クロシェット……かもしれません。ひとまず、すみれルートをクリアしたので感想を。

 

この世界で『魔法』と呼ばれる現象が認知されたのは、そう遠い昔の話ではない。代官山十四郎らの尽力により設立された、魔法に適正のある者もない者も教育を受けることができるスズノネ魔法学園は、築十数年といったところだろう。この学園には特殊なカリキュラムがあり、毎年成績の悪い七人──通称、セブン──が選ばれ、スズノネトライアルという強制合宿が開催されるのだ。セブンに選ばれてしまった城戸幸村たちは、そこで課題を与えられ──

 

 と、舞台背景はこのような感じです。

 

 スズノネの学園長の孫である代官山すみれは、高い魔法適正を持っていながらも魔法をほとんど使おうとはせず、そのことでセブンに選抜されます。上述したように代官山一族は、スズノネ魔法学園の設立に関わっており、そこには彼女の両親も含まれています。しかし、そのとりくみの中で父親である代官山守路が過労で倒れ、そのまま亡くなった。そうした事情から、すみれは魔法に対して悪いイメージを持ってしまっているらしいです。

 

 自分の父親が──魔法学園の設立という悲願のためとはいえ──体を壊すまで働いていたという事は……どれほどすみれの心を締めつけていたでしょう。幼いころから思慮深かったすみれは、本人に聞こえる範囲では『もっと自分の体を大切にして』『もっと私のそばにいて』とは言えなかった。そう言うことで、父親が苦しむことがわかっていたから。

 子供であるすみれを構うことより、まして守路自身の健康よりも優先度の高かったスズノネ魔法学園……ひいては魔法という新たな発見。幼いすみれからすれば、『魔法が自分の家族をバラバラにした』と考えてしまうのは仕方のないことで、一面の真実ではあるのかもしれません。けれど、すみれが敬愛する父親の、最期の言葉は──

「スズノネに行きなさい。そうして僕のかけがえのない大切なものをすみれに見つけてほしい。それはきっと、君の大切なものにもなる」

 というものでした。

 守路としては、大切な人──少なくとも、一緒にワルツを踊ってくれるような相手──がいない限りは見つけることが出来ないメッセージを、なんとしても娘には見つけてもらいたかったのでしょう。じきにこの世を去ってしまう自分ではなく……学園のあちこちに仕掛けたイタズラのような謎かけを娘と一緒に最後まで付き合ってくれる相手が、娘の傍に現れることを願って、残酷ともとれる言葉を遺したのだと思います。

 

 けれど……なんとももどかしい話ですね。大好きだった父親の最期の言葉が、その父を奪ったとも言える魔法学園に通って、そこで大切なものを見つけて欲しい……というものとは。身勝手で、残される側は、たまったものではない、と思ってしまいます。自分の中に流れる魔法の才能を自覚しながらも、けれど魔法を使おうとしないことは、彼女なりの反抗だったに違いありません。代官山すみれという女の子は、スズノネに入学した当時は、父親の最期の言葉を守りたくて学園に通っているけれどもそこで魔法を学ぶ意義はほとんど感じていないという、矛盾した状態だったのだと思います。

 

 思い返すと、すみれが仁乃以外のクラスメイトと親しく会話している描写って、まったく浮かんで来ないんですよね。仁乃はそういうシーンがあったにも関わらず。魔法科に入学しながら授業でまったく魔法を使わない、けれど才能は人一倍。クラスメイトからすれば、すみれは接し方が難しい存在だったのかもしれません。丁寧な言動で人あたりがよいので、普通に接する人は多いけれど、心を許せる相手はいない……といったような。

 そんな彼女にとって、仁乃の存在は思っているよりも大きいものだったのでしょう。二人が仲良くなっているのは、仁乃の人懐っこい性格もあるでしょうし、これは邪推ですが『膨大な魔力を秘めているけれども、その魔法によって問題を抱えている』という点が、すみれの共感を得たからかもしれません。

 また、姉である桃子が勧めた学園新聞の発行も、彼女にある種の学園生活の楽しさを与えたはずです。

 

 けれど結局、授業態度は不真面目で──

 セブンに選ばれたすみれは、父親とよく似た風貌の青年──城戸幸村と出逢うことになるわけですね。そして惹かれあった二人は、大切な人と一緒でなければ見つけることの出来ない守路からのメッセージを探し当てます。

 

 こういったゲームでは、告白は主人公の方からするケースが多いと思うのですが、すみれと幸村の場合は、幸村の告白を止め、すみれの方から言葉にしています。父親に「そばにいて」と言えなかった彼女が、けれど今度は幸村に対し、きちんと言葉にしているのです。自然で、なにより綺麗な流れですよね。ED曲『with you』中の歌詞、『そばにいて you can stay with me everytime どんな時だって』は、そのあたりにも繋がっているのかなぁと思ったりしました。

 魔法に対して前向きになったすみれと幸村の日常は、守路が想ったかけがえのない大切な場所で続いていきます。