日々姫ルート、メモ書き
凪「痛かことから先に忘れよったら、人は簡単に死ぬばい。そぎゃんこつばわからんのは、心構えが悪かとよ」凪の言葉は、凪らしくもなく、水平だ。感じさせられた驚きは、すぐさま静かな納得に変わる。
日々姫「理解しました。出来ました。私少しも──有利になんてなってない」
日々姫「同じことをしているだけです。わたし、兄さんの妹ですから」
日々姫「理解、してくれてますか? 私の気持ち」
日々姫「でも、私、わからせますから。兄さんに。そわそわって、うずうずって、こういうのかって、絶対」
日々姫「傷ば深めてしまうのは、ポーレットさん」日々姫「にぃにぃたちに『謝らせてしまった』って……そしたらあん人、自分をもっと責めてしまいよるけんね」日々姫「わかるんよ。私も、ポーレットさんと同じやけん……にぃにぃやハチロクのように、強かことなかけん」
にっき
<かいもの>
Amazonで色々ポチるの巻。ものべのhappy endとか、PS4版まいてつに付属してるLoseのサントラは昨日届きまして、Ducaの15周年ベストアルバムは発売日がまだなので来週に届くみたい。『観覧車〜あの日と、昨日と今日と明日と〜』の音源は持っていなかったので、すごい楽しみ。本当はLoseさんちの「こころたびーLose PIANO Selectionー」も買いたかったのですが、2万円近くのとんでも価格だったので断念。再販とかしませんかねぇ……。
<漫画>
『政宗くんのリベンジ』を全巻まとめ買い、読み終わりました。というのも、作画担当の人が昔書いてた『こもりクインテット!』って漫画──杉井光が原作担当で、さよならピアノソナタと同じ舞台で描かれるカルテット+ドラムスの物語──が好きでして、この漫画も気になっていたんです。
幼少期に肥満体型でいじめられていた政宗くん。当時そんな自分をこっぴどく振ったお嬢様に復讐するため、ダイエットしてイケメンになった姿で彼女に近づく! っといった導入からスタート。結構ヘビーな設定だと思いましたが、その後の展開はすごいソフトでしたね。よくあるキャッチーなラブコメに、小さじ一杯くらいのシリアス設定で味付けしました、といった具合。一気読みするくらい面白かったのですが、この手のラブコメはどうしたって、とらドラという化け物と比較される運命にあるんですよね。あれってラブコメの皮を被った何かであって、ラブコメではないんでしょうけど、それでも構造がラブコメじゃないですか……あれ、ラブコメって何だ? そう、ですから、あれと比較されて耐えられる物語って稀有なもので、この漫画はそこまではいかなかった印象でした。
<まいてつ>
故障していたデスクトップPCを新調したので、そちらにもインストール。日々姫ルートに進むために共通部分を進めているのですが、何度読んでも面白い。
ハチロク「未熟であれば、熟成させれば良いだけのこと」
双鉄「!」
ハチロク「双鉄様が、教えてくださったことですよ?」
双鉄「ああ──そうだな。そうだった」
(中略)
双鉄「よし、行くぞハチロク。仕切り直しだ」
ハチロク「はい。お供します、双鉄様」
こんなやり取りを共通部分で自然に入れることが出来る技術、脱帽します。この会話ひとつで、双鉄とハチロクの関係性が、二人の間に存在する空気が、共に前に進む姿が、十分すぎるほどに伝わってきます。主従という形式をとってはいるけれども、互いを尊重し、支え、歩いていく。この二人の場合、それがまたすごく絵になるんですよね……。ああ、誤解が無いように書いておきますと、俺がハチロクルートを読了していて再度共通部分を読んでいるからこのシーンが映えている、というわけではないのです。初読の時から、いやむしろ初読のときの方が、この感動は大きかったように思うのです。
双鉄の「仕切り直しだ」の声色がまた素晴らしくて、凛とした中にも、ハチロクへ向けた感謝と笑顔が感じ取れる。好きなシーンのひとつです。
明日は多めに時間がとれそうなので、ようやっと日々姫ルートを進めることにします。右田日々姫という女の子は、子供のころから優秀な姉や兄と共に過ごしてきたので、おそらくかなりのコンプレックスを持っていたはず。それは、『絵』という姉兄にはない武器を持つことや、宝生稀咲の存在で一定の収まりをみせていると思うのですが……。未だに日々姫が他人に評価されることを苦手とするのは、きっと自分に自信がないから。評価されるということは、他人と比較されるということだから。そうしたフックの存在から、はたして日々姫ルートはどういう展開になるのか。ほんとうに楽しみです。
にっき
<書くことについてとか>
ずいぶんと更新が途絶えておりました。というのも、俺はこうやって文章を書くのが苦手で、「これは文章に残しておかねばっ!」と思った事があったとしても、まず何から書き出せばいいのかとか、言いたいことが上手く書けないとか、そもそもそれは本当に書く必要のあることなのかとか、頭の中でぐるぐる考えて結局何も書かないまま……そういったサイクルによく陥るわけなのです。ですので、”文章化して残しておきたいもの”が、文章化する労力を上回るレベルでない場合、「まあいっかー」で終わってしまうこともよくあったりするわけで。けれど、そうしたときにその”文章化して残しておきたいもの”は、時の流れと共に心の中で確実に変質していってしまう。それは、冷蔵庫に入れた食品が腐る……というよりも、氷が融けて水になるみたいな、水が蒸散して水蒸気になるような、そんなイメージ。それは確かに存在しているのだけれど、手でつかもうとしても指の間からすり抜けていく。仮につかむことが出来たところで、再構築しようとしても全く別物になっている。残滓、みたいな。そしてそれは、きっと悲しいことだと思うのです。
俺は、人間の感情って、ほとんど全て言語化できると考えているんですよ。盲信かもしれませんが。それは一言かもしれないし、便せんに入れたラブレターかもしれないし、400ページの小説かもしれないけれど、感じた気持ちというものは、正確な形で言語化することができる。技術さえあれば。そう、技術さえあれば、です。だから、同じ感情を伝える場合でも、一言で済む人もいれば、いくつもの言葉を重ねる人もいれば、そもそも上手く伝えることができない人もいたりする。……まあ、いくら気持ちを正しく言葉に込めることができたとしても、受け取る側が正しく理解するとはかぎらないのですが。それはそれとして。
というわけで、“すごい書き残したいこと”に遭遇したときに上手く言語化できない、なんてことになったら嫌なので時々は日記──何日かの記録をまとめて書くことが果たして“日記”と呼べるのだろうか──でも書いて、慣れておこうかな、と思ったしだいであります。
<引っ越しについて>
俺は三重に住んでまして、三重って結構上下に長いんですよ。その中くらいから、上の方まで引っ越しました。名古屋が近くなって、それなりに便利になりましたね。ちょっと気が向いたら大須まで行けるってのは、思ったよりもいいものです。
通勤は相変わらず電車なのですが、三重県ってJRよりも近鉄の方がはるかに便利で、利用者も圧倒的に近鉄の方が多いんです。『まいてつ』をプレイしている身としては、JRで通勤、と思わなくもないのですが、やはり利便性から近鉄になってしまう。まあどちらにしても、鉄道に多少の関心を持つあたり、我ながら単純な性格をしているなぁと思いました。
<まいてつについて>
前回の感想が5月31日ですか……。随分と間が空いたのですが、まだハチロクとポーレットのシナリオが終わったところなのです。誤解しないでいただきたいのですが、つまらないわけではないのです。むしろ真逆で、これほど自分に波長の合う作品はめったにお目にかかれないと断言できます。ただ、仕事が多忙であったり、引っ越しの準備等があったり、そもそもエロゲの気分ではなかったり──なんだろう、そういうサイクルってありません? 定期的にラノベが読みたい、とかアニメが見たいとか──したわけなのです。
それはさておき。
ハチロクシナリオも、想像通り素晴らしいお話だったのですが、そのあとに読んだポーレットのシナリオがまたやばかった。なんですかあの愛に満ち溢れた物語は! ハチロクシナリオは、双鉄とハチロクが共に過去を乗り越える──終着駅にたどりつく、と言い換えてもいいでしょう──お話で、“それから”の進み方も描かれる素晴らしいものでした。これぞまさに王道。
一方、ポーレットシナリオは。俺は前回の日記でハチロクと双鉄が似ている、と書いたと思うのですが、ポーレットについても同様でした。幼いころに出会っていた二人。大切な人との別離を経験したばかりの二人にとって、その出会いはささやかな、そして大切な転換点になっていて。それから歩いてきた道は、奉仕的ともとれるほど痛々しいもので。けれど。けれどですよ。それが物語終盤でくるりと反転するんですね。もう、見事としか言いようがない。痛々しく映っていた奉仕的活動──もっとも、この形容を本人たちは否定するでしょう──が、報われる。過去のすべてが、味方になる。
ポーレットシナリオに入った後、日々姫とハチロクが実に象徴的な台詞を言うんですよ。
日々姫「違いますよ、兄さん。その手はもっと──未来に向けて動かさなくちゃ、ダメですってば」
ハチロク「はい、双鉄様、おやすみなさいませ。そうしてどうぞ、素敵な明日をお迎えください」
どちらも、自分に構おうとする双鉄へ向けた言葉です。彼女達はこの時からすでに、双鉄とポーレットなら、共に歩いてゆくことが出来るのだと確信していたのでしょう。暗い過去は、けれど明るい未来へと地続きになっているのだと。
心に巣くう暗い闇のような過去を、王道的に乗り越えるのではなく、見方を変えて、味方に変えて、抱きしめる。それは、なんというか、すごくロマンのある回答だと思いました。だからこそ、あの終盤の美しさがあるのでしょう。もう……大好きなお話でした。